虫歯や歯周病でもないのに行われる抜歯、便宜抜歯について
虫歯や歯周病がひどくなると抜歯することはご存じの方も多いと思います。ですが、虫歯や歯周病などの歯のトラブルがなくても抜歯することもあります。
その代表が、便宜抜歯とよばれる抜歯です。
どうして虫歯や歯周病でもないのに歯を抜かなくてはならないのでしょうか?今回は、便宜抜歯という抜歯について解説しましょう。
便宜抜歯について
便宜抜歯とは
便宜とは、ある目的に対して都合が良いことという意味です。
ということは便宜抜歯は、何かに都合が良い抜歯ということになります。
では、その何かとは何でしょうか。それは矯正治療です。
便宜抜歯は矯正治療のために行われる抜歯というわけです。
便宜抜歯が必要なケース
矯正治療を受ければ必ず便宜抜歯をするわけではありません。
便宜抜歯をするのは、顎の大きさと歯の大きさのバランスが取れていないときです。
アーチレングス・ディスクレパンシー
顎の大きさと歯の大きさのバランスを計るときに使われるのが、アーチレングス・ディスクレパンシーです。
ですので便宜抜歯を語る上で、アーチレングス・ディスクレパンシーの説明は避けて通れません。
アーチレングス・ディスクレパンシーは、歯の横幅の合計値と歯を並べる顎の大きさの調和度合いを示す言葉です。
アーチレングス・ディスクレパンシーがプラスだと、歯を並べるスペースが十分確保できています。
反対にマイナスだと歯を並べるスペースが足りないという意味になります。
便宜抜歯が必要になるのは
便宜抜歯が必要になるのは、アーチレングス・ディスクレパンシーがマイナスの時です。
ただし、アーチレングス・ディスクレパンシーが少しでもマイナスだと便宜抜歯を行うというわけではありません。歯科医院でしっかりと歯の状態を診断したうえで、必要と判断された際にのみ、便宜抜歯を行います。
マイナス値がそこまで大きくないなら、歯の横面を薄く削るなど、抜歯以外の方法で並べるスペースを確保することができます。
便宜抜歯の対象となる歯の条件
どのような歯を便宜抜歯に選ぶのでしょうか。
見た目に影響しない
まず挙げられるのが、見た目に影響しにくい歯です。
前歯を抜歯してしまいますと、歯並びをキレイにしても見た目が悪くなってしまいます。
見た目に影響するような歯は便宜抜歯に選ばれません。
咬み合わせに影響しにくい
最も奥の歯を大臼歯といいます。
大臼歯は、食べ物を噛む力が最も強い歯です。
このような歯を抜いてしまうと、噛む力が減ってしまいますので、噛み合わせる力が強い歯も選ばれません。
便宜抜歯に選ばれる歯は?
上記の条件にあう歯として、第一小臼歯という前から数えて4番目の歯が選ばれることが多いです。
その後ろの第二小臼歯に虫歯がある、被せ物をしているなど、そちらを選んだ方が良いと考えられる場合は、第一小臼歯ではなく第二小臼歯が選ばれることがあります。
上下左右で4本のときもあれば、上顎、もしくは下顎のどちらかだけで2本だけで済むときもあります。
便宜抜歯のポイント
便宜抜歯には普通の歯の抜歯以上に気をつけたいポイントがあります。
歯根膜を残す
歯根膜は、歯根と骨を繋いでいる薄い靱帯のような組織です。
歯を抜いた穴に歯根膜がたくさん残っているほど、治りが速くなります。
それだけでなく、骨の減りも少なく抑えられますので、矯正治療を進める上でも好都合です。
抜歯に際しては、できるだけ歯根膜が残るようにすることが大切とされています。
骨を傷めない
歯の周りの骨にダメージの少ない抜歯を心がけることも大切です。
なかなか歯が抜けない難しいケースでは、歯の周りの骨を削って抜くことがあります。
骨を削るということは骨が減るということです。
骨を削ることなく、骨にダメージが及ばないように抜歯すると、その後の矯正治療もスムーズに進みやすいです。
便宜抜歯のメリット
便宜抜歯の特徴をメリットとデメリットに分けて解説します。
まずメリットからです。
歯を並べるスペースが得られる
便宜抜歯の目的であり、最大のメリットがこれです。
歯を抜くわけですから、1本分のスペースが確保できます。
小臼歯の幅は1本7〜8㎜くらいですから、かなりのスペースが確保できることがわかります。
矯正治療の効率が高くなる
歯に限らず、窮屈なところでものを動かすのと余裕のあるところでものを動かすのでは、余裕があるところの方が動かしやすいものです。
便宜抜歯をして歯を並べるスペースに余裕ができれば、それだけ歯を動かしやすくなるので、矯正治療が効率よく進められます。
後戻りのリスクも減る
矯正治療を終えて歯並びがキレイになった後、しばらくしてから再び歯並びが悪くなることを後戻りと言います。
便宜抜歯をせずに歯を動かすとギリギリのところで歯を並べますので、後戻りを起こしやすいです。
一方、便宜抜歯をすると余裕がある分、後戻りのリスクも減らせます。
便宜抜歯のデメリット
便宜抜歯にはメリットだけでなく、デメリットもあります。
歯の本数が減る
抜歯するわけですから、歯の本数が減ってしまいます。
自費診療になる
保険診療は、病気の治療を目的としています。
虫歯や歯周病、親知らずの抜歯は、病気の治療の一環なので保険診療で受けられます。
ところが、便宜抜歯は病気の治療を目的とした抜歯ではありません。
このため、便宜抜歯は保険診療では受けられないので、治療費が高額です。
治療期間が長くなる
便宜抜歯で得られるスペースは大きいので歯を効率よく並べられるわけですが、大きい分はを動かす距離も長くなります。
動かす距離が長くなるので、長い分動かす時間も長くなるので、治療期間が長くなります。
これも便宜抜歯のデメリットのひとつです。
まとめ
今回は、虫歯でも歯周病でもない歯の抜歯、便宜抜歯について解説しました。
便宜抜歯は、矯正治療で歯を並べるスペースが不足する場合に行われる抜歯です。
健康な歯を抜くわけですが、歯を並べるために大切な抜歯です。
便宜抜歯について、ご質問などがある方は、成増さくら歯科・矯正歯科に一度ご相談ください。