顎関節症が増えてきています
コロナウイルス感染症の影響で、日中もマスクを装着する生活をしている方も多いかと思います。それに伴って、お口を開ける時に、耳の前あたりで痛みやカクカクとした音を感じたり、開けにくさを感じる方が増えてきました。これらは顎関節症の可能性があります。
顎関節症の症状
噛み合わせ治療のページでも解説していますが、顎関節症は、顎関節に音(クリック音やガリガリという音)、急にロックがかかったように口が開けにくくなることなど、様々な症状が見られる疾患です。代表的な症状としては以下のようなものがあります。
口を開閉する際に、耳の前に痛みが出る
顎関節を動かす際に、痛みを感じるのが最も一般的な症状です。痛みは軽度なものから強いものまで様々で、食事の際の咀嚼(そしゃく)時や、あくびをする際に生じることが多いとされます。
急に口が開けにくくなる
顎関節の可動域が急に制限され、口が大きく開けられなくなることがあります。開口できる量が減少する程度だけでなく、完全に口が開かなくなる場合(開口障害)もあります。
顎関節で音がする
顎関節を動かす際に、「カクンカクン」「ゴリゴリッ」といった音が鳴ることがあります。
この音は関節にある軟骨の関節円板がずれて生じるものです。音が鳴るだけで痛みがない場合は関節雑音と呼ばれ、マウスピースなどを使っても音が消えない場合があるため、治療対象になりません。
しかし、音が鳴り、かつ痛みを伴う場合は、鎮痛剤を使うなど治療が必要な可能性があります。
顎周囲の筋肉痛
顎の周囲には、お口を閉じる筋肉が頰(胸筋)、こめかみ(側頭筋)、また頸部には胸鎖乳突筋といった筋肉があります。これらの筋肉のコリ、痛みが認められることがあります。
その他の症状
上記以外にも、頭痛、耳鳴り、めまいを感じる方がいらっしゃいます。
顎関節症の原因
顎関節症の原因は1つの要因ではなく、複数の要因が関与して発症していると考えられています。主な原因は以下のとおりです。
習癖によるもの
一番多い原因がこの癖によるものです。顎を使うバランスが左右で釣り合っていない場合に発生しやすくなります。
具体的には、
- スマホやノートPCを操作する際の視線が下がっているため、顎が引いた状態になる
- 片方の顎だけで硬いものを食べる
- 頬づえをつき、TVを見たり、スマホを操作する
- 寝そべって、枕を顎の下において読書をする
- 吹奏楽(クラリネットなど)をする
- 下唇を巻き込む癖がある
などです。どれも顎に過度な負荷をかけている状態です。
歯ぎしり・食いしばり
寝ている間の歯ぎしり・食いしばりにより、顎関節周囲の筋肉が過度に緊張することで、顎関節の痛みや開口障害などの症状が現れることがあります。
また、日中でも、緊張や重い物を持つことにより、歯が接触する・食いしばるといった状態になるTooth Clenching Habit(TCH)も原因の一つに考えられています。
関節円板の異常
顎関節には、骨と骨の間にあるクッションの役割を果たす関節円板という軟骨組織があります。関節円板が前方にずれたり、破れたりすると、顎関節の動きがスムーズにできなくなり、痛みや音が生じる可能性があります。
外傷
転倒したり、ボールなどが顎関節に当たるなど、強い衝撃を受けた場合、骨や関節円板が損傷を受け、顎関節症を発症することがあります。
歯並びや噛み合わせの異常
開咬(かいこう:噛み合わせた時に、上下の前歯にすき間ができる歯列不正)によって、噛もうとしても前歯で噛みきれない方は、顎に負荷がかかりやすい状況になります。
その他、関節リウマチなどの疾患も原因になると考えられています。
顎関節症の診断
顎関節症の診断は、問診、触診、画像診断などから総合的に判断します。
1.問診
顎関節症の症状内容と、症状が現れた時期、その後の経過、鎮痛剤は効いたかなどを詳しく問診します。
2.触診
顎関節の圧痛、関節音などを触診で確認します。
3.画像診断
まずはレントゲン撮影を行い、顎の関節の形を確認します。必要に応じてCT撮影で下顎頭の形を三次元的に確認します。また関節円板を確認する場合はMRI撮影で行います。
顎関節症の治療
顎関節症の治療法は、症状や原因によって異なりますが、顎関節の炎症や腫瘍など、顎関節症以外の疾患がないことを確認してから開始します。
習慣の改善
まず、前述の顎関節症の原因に思い当たる習慣がある方は、意識して変えていきましょう。
開口訓練
日中は、痛みが出るくらい開口するようにしましょう。最も分かりやすい開口訓練はあくびです。開口する最初の目標は35mm以上です。
35mmを超えたら、45-50mmを目指していきます。痛みがあれば、痛み止めを内服し、効いてきた1時間後あたりに開口訓練(あくび)をするようにしてください。
この時のポイントは、真っすぐ開閉口するように心がけることです。開閉口時に、歯ぎしりのように左右の動きを加えると、お口を閉じる筋肉を鍛えてしまうため、効果が薄れてしまうからです。
また、長期間鎮痛剤を使用すると、胃を痛める可能性があるので、その点は注意しましょう。
理学療法
温熱療法やマッサージなどの理学療法も取り入れてみましょう。お風呂上がりなど、温かい状態でマッサージするのがおすすめです。
マウスピースの利用
上記の対処を行ったうえで、マウスピースの使用を検討していきます。マウスピースを装着することで、顎関節にかかる負担を軽減し、筋肉の緊張を緩和します。
それでも症状が改善しない場合は
これらの対処を行なってもなかなか症状が改善しない場合には、手術を検討します。主な手術法としては、顎関節窩(がくかんせつか)を拡大することで、関節円板の動きをスムーズにする関節窩拡大術(かんせつかかくだいじゅつ)や、関節円板を切除する関節円板切除術、顎関節の骨を削って骨の形を整える関節形成術などがあります。
ただし、これらは顔面神経が近いために、顔の表情筋が障害を受ける可能性や、出血・癒着による症状悪化の可能性などもあるため、経験豊富な口腔外科医による慎重な判断が必要です。
顎関節症のお悩みも成増さくら歯科・矯正歯科へ
今回は、顎関節症の症状や原因、その治療法についてお話ししました。成増さくら歯科・矯正歯科では、歯ぎしりや噛み合わせ、顎関節症の治療についても丁寧に対応いたします。
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