2024.09.04

差し歯とインプラントって何が違うの？

普段診療をしていると、いろいろなことを質問されます。
その中で比較的よく聞かれるのが、歯がなくなったところに差し歯ができないかというご質問です。
歯がなくなったしまうと、残念ながら差し歯はできません。
その場合は、差し歯ではなく、インプラントで治します。
差し歯とインプラントって似てそうで全く異なる治療法です。
今回は、差し歯治療とインプラント治療の違いについて解説します。

差し歯治療とは

差し歯治療は、歯根に芯を立てて、そこにクラウンという被せ物をつける治療法です。
構造上、クラウンからでた芯が歯根に差し込まれているので、差し歯とよばれています。

差し歯治療にはいくつかの特徴があります。

歯根を利用した治療法

差し歯治療は歯根を利用した治療法です。
歯根がしっかりしているというのが最低条件です。
歯根が折れていたり、歯根自体に歯肉より深いところまで及ぶような虫歯ができていたりしたら、差し歯治療はできません。

虫歯の最後の治療法

虫歯やケガで歯が欠けると、現代の歯科治療では人工材料で治します。
欠けた範囲が少しずつ広がっていくと、人工材料の範囲が広くなります。
人工材料の範囲が最大限となったのが、差し歯治療です。
差し歯治療で治療できないくらい、歯が欠けてしまった場合は抜歯になるので、差し歯治療は虫歯の最後の治療法といえます。

保険診療が使える

差し歯治療は、保険診療で受けることができます。
保険診療の差し歯は見た目はあまり良くないですが、治療費を抑えた治療が受けられるのが利点です。
仕上がりを重視する方は自費診療の差し歯があります。
治療の選択肢が多いのも差し歯の特徴です。

治療自体は痛くない

差し歯にする歯は、すでに歯の神経がありません。
歯を削っても痛くないので、治療中に痛みが出ることはほとんどなく、麻酔なしで治療を受けられます。

虫歯や歯周病になることもある

差し歯は歯根を利用した治療法ですから、歯根自体に虫歯や歯周病が生じることもあります。

寿命は歯根の状態次第

差し歯の寿命は、5〜10年弱と言われています。
寿命に幅があるのは、歯根の状態が大きく左右するからです。
歯根がしっかりしている、歯周病になっていない差し歯なら長く保ちますが、そうでない差し歯は比較的早く寿命が来てしまいます。
5年保たずにダメになってしまう差し歯も珍しくないです。

インプラント治療とは

インプラント治療は、顎の骨にインプラントというチタンで作られた人工の歯根を埋め込み、そこに上部構造という人工歯をくっつける治療法です。
歯がなくなってしまったところに、歯の代わりとなる人工の歯を作る治療です。

続いてインプラント治療の特徴を説明します。

しっかり噛める

インプラントは、チタンと骨が結合する現象（オッセオインテグレーションといいます）を応用した治療法です。
骨と結合したインプラントはぐらつくことがありません。
とてもしっかりしているので、どんなものでもしっかり噛めます。

自然な仕上がり

インプラントの被せ物は、セラミックが選ばれることが多いです。
もちろん、セラミック以外の選択肢もありますが、セラミックは色合いだけでなく、つやも普通の歯と見分けがつかないくらい自然です。
自然で違和感のない仕上がりを求める方は、セラミックがおすすめです。
セラミックを使ったインプラントは、元々の歯と同じような違和感のない仕上がりになります。

インプラントは長寿命

インプラントが10年後どれくらい残っているかを示すのが、10年残存率です。
インプラントの10年残存率は、上顎も下顎も90%以上です。
20年残存率も80%以上あるので、かなり長寿命な治療法と言えるでしょう。

保険診療の対象外

ごく一部の限られたケースを除き、インプラント治療は保険診療の対象外です。
このため、治療費が高額になっています。

治療期間が長い

インプラントでは骨とインプラントが結合するのを待たなければなりません。
骨の状態によりますが、骨と結合するには数ヶ月から1年ほどかかります。
治療期間が長いのもインプラント治療の特徴です。

差し歯治療とインプラント治療の違い

最後に、差し歯治療とインプラント治療を比べてみましょう。

歯の有無

差し歯治療は、歯根に芯を立てて被せる治療法なので、歯がないとできません。
一方、インプラント治療は、顎の骨にインプラントという人工の歯根を埋め込んで被せる治療法なので、歯があるとできません。
歯がある場合の治療法が差し歯治療、歯がない場合の治療法がインプラント治療というわけです。

治療費の高低

差し歯治療は、保険診療の治療法を選ぶと、治療費を抑えることができます。
インプラント治療は、ほぼ自費診療と考えてもらって間違いない治療法なので、治療費が高いです。
安く治療できるのが差し歯治療、治療費が高いのがインプラント治療です。

虫歯の再発の有無

差し歯治療は歯の歯根を利用しますので、そこから虫歯になるかもしれません。
インプラント治療は、チタンの人工歯根を利用しますので、虫歯になることはありません。
虫歯の再発の可能性があるのが差し歯治療、ないのがインプラント治療です。

外科処置の必要性

差し歯治療は、基本的に外科処置は必要ありません。
インプラント治療は、インプラントを骨に埋め込む外科処置が欠かせませんし、骨の状態によっては、骨造成という追加の外科処置が必要になることもあります。
外科治療が必要ないのが差し歯治療、必要なのがインプラント治療です。

寿命の長さ

差し歯治療の寿命は5〜10年です。
インプラント治療は10年後の残存率が90%以上です。
保ちが数年程度なのが差し歯治療、10年以上保つのがインプラント治療です。

まとめ

今回は、差し歯治療とインプラント治療の違いについて解説しました。
どちらも被せ物をつけるという点で同じなので、似た治療と思われる方がいらっしゃいます。
ところが、差し歯治療は歯を利用した治療法で歯のある方向け、インプラント治療は顎の骨を利用した治療法で、歯のない方向けです。
対象だけでなく、さまざまな違いがあります。
差し歯治療とインプラント治療についてご質問のある方は、当院でぜひご相談ください。

また、医療連携施設である町田歯科・矯正歯科のコラムでも、差し歯治療とインプラント治療の違いについて詳しく解説していますので、興味のある方は、併せてご参照ください。