今もトップクラスの優れた性質を持つ被せ物『金歯』
皆さんは被せ物というと何をイメージされるでしょうか?銀歯や金歯、セラミックなどでしょうか。
以前、実は欧米では使われない!?銀歯のお話で解説しましたが、銀歯は保険適用であるものの、プラークがつきやすく、虫歯や歯周病にもなりやすいため、欧米ではほぼ使われていません。
そこで虫歯になりやすい被せ物と、なりにくい被せ物の違いって?のコラムでは、虫歯になりにくい被せ物として、セラミックと金歯を挙げました。
金歯は、とても優れた性質を持つ被せ物なのですが、仕上がりの良さから人気が高まっているセラミックの陰に隠れがちです。 そこで今回は、金歯の優れた特徴についてご紹介しようと思います。
金歯の素材
金歯といっても、純金で作られているのではありません。 金歯の材料は、白金加金(はっきんかきん)という金、銀、白金、銅、パラジウムなどで作られている金合金です。
白金加金と言っても、成分の割合の違いによってさまざまな種類がありますが、いずれの白金加金も、金の占める割合が50〜70%ほどと高いのが特徴で、それにより、仕上がりが金色になっています。
ちなみに、保険診療でよく使われる金銀パラジウム合金の金の割合は、12%しかありません。
金歯のメリット
金歯には数多くの利点があります。
虫歯や歯周病になりにくい
金歯の大きなメリットの一つは、虫歯や歯周病になりにくいという点です。
プラークがつきにくい
虫歯や歯周病の原因は、歯の表面についているプラーク(歯垢)です。 金で作られた金歯の表面は、たいへん滑らかで、そのうえ傷もつきにくいという優れた特長があります。
しかも、銀歯のように虫歯や歯周病の原因菌を呼び寄せることもありません。 このため、虫歯や歯周病の原因となるプラークがつきにくく、たとえついたとしても歯磨きで簡単に取り除けます。
段差や隙間が出にくい
金は金属ですが、大変やわらかいという性質を備えています。 とてもやわらかいので、向こうが透けて見えるほどの薄さの金箔にも加工できます。
被せ物を作る時は、削った縁にできるだけ段差なく合わせるようにしなければならないのですが、これがなかなか難しいのです。
金はとてもやわらかいので、削った縁に合わせやすく、段差や隙間ができにくい被せ物に仕上げられます。 段差や隙間が少なければ、食べ物が引っかかりにくくなるので、歯磨きもしやすくなり、虫歯や歯周病を再発しにくくなります。
噛み合わせの歯に優しい
金歯は、金歯をつけている歯だけでなく、噛み合わせている歯にも優しいという利点も備えています。
柔軟性の高さ
歯の位置は毎日少しずつ変わっているので、被せ物を入れたときにピッタリ噛み合わせていても、時間が経つとピッタリ噛み合わせられなくなっていることもあります。
そのような時でも、金歯はやわらかいため、噛み合わせの変化に合わせて噛み合わせ面が柔軟に変形しますので、適切な噛み合わせ関係を長期にわたって保ってくれるのです。
歯に近い硬さ
被せ物の硬さが歯より硬すぎると、噛み合わせている歯が負けて欠けてしまうことがあります。 逆に弱すぎると、被せ物が壊れてしまいます。
金歯の硬さは、普通の歯に近い硬さですので、噛み合わせている歯に過剰な力が加わる心配がほとんどありません。
割れない
セラミックの被せ物は、確かに硬いのですが、衝撃力には弱く、噛み合わせた時に欠けたり割れたりすることがあります。
金は、柔軟性のある素材なので欠けたり割れたりすることがありません。 奥歯のように強い噛み合わせ力が加わるところでも十分に耐えられます。 歯ぎしりや食いしばりの癖のある方でも、セラミックのように、欠けたり割れたりする心配もありません。
熱膨張係数が歯に近い
どんなものでも熱を加えれば大きくなり、冷やせば小さくなります。 熱でどれくらい大きさが変化するのかは、熱膨張係数でわかります。
実は、金の熱膨張係数は歯の熱膨張係数にとても近いのです。 さすがに全く同じというわけではありませんが、他の素材より近い数値なので、歯への密着度が変化しにくい状態を保つことができます。
変色しない
金属イオンとなって溶け出しにくい金属を貴金属、反対に溶け出しやすいものを卑金属といいます。
金属イオンになりやすい性質をイオン化傾向といいますが、金は最もイオン化傾向の小さい部類に入る貴金属です。 イオン化傾向が大きいと腐食しやすくなるのですが、腐食が起こると色が変わってしまいます。
貴金属である金は腐食を起こしにくいうえ、表面に保護膜が作られるので、当初の色を長期にわたって保つことができます。
金歯の難点は?
このようにメリットの多い金歯ですが、もちろん 難点がないわけではありません。
色の違い
当然のことですが、金歯の色は歯の色と違います。 色の違いにより目立ってしまうのは、金歯の難点の一つでしょう。
価格の高騰
近年、金価格がとても高くなっています。 毎日のように金が値上がりを続けていることをニュースでご存知の方も多いのではないでしょうか。
金歯は、自費診療の被せ物なので元々高い上、材料の単価も高くなっているので、とても高額になっています。
まとめ
今回は、金歯の優れた特徴について解説しました。 金歯は、見た目は歯の色と同一ではなく、安いものでもありませんが、それを補ってあまりあるほど多くの利点を持っています。
金歯の特性を考えると、金歯は特に「プラークがつきやすい方」「セラミックや歯が欠けたことのある方」「歯ぎしりしている方」「奥歯のインプラント」などにおすすめです。
成増さくら歯科では、歯の状態や習慣に応じて、患者さん一人一人にぴったりの被せ物をご提案いたします。 今回のコラムを読んで、金歯に興味が湧いた方や、他の被せ物に関してご質問のある方も当院でぜひご相談ください。