根管治療
根管治療について
根管治療(歯内療法)とは
根管治療とは、虫歯が重症化した場合などに行う治療方法です。
「根管」(こんかん)は、歯の一番内側にある歯髄(神経や血管)で満たされた部分をいいます。虫歯が進行すると、歯髄が細菌に感染して炎症を起こします。
こうしてダメージを受けた歯髄を除去し、空洞になった根管に詰め物を行うのが根管治療で「根っこの治療」とも呼ばれています。
「歯髄(しずい)」は
神経や血管の集まり
私たちの歯は、大きく分けると3層構造になっています。
- 歯冠の表面を覆うエナメル質と、歯根の外側を覆うセメント質
- その内部にある象牙質
- 一番内側にある歯髄
歯髄は神経や血管、リンパ管が集まったもので、象牙質に栄養を供給しています。こうした歯髄の働きによって、歯は丈夫かつ健康的に保たれるのです。
しかし、虫歯によってエナメル質から象牙質へと侵食が進んで歯髄に達すると、歯髄が細菌に感染して炎症を起こします。こうなるともう、根管治療によって歯髄を除去するしかありません。根管治療は必然的に神経を除去することになるので「神経を抜く治療」とも呼ばれています。
神経に達した虫歯を放置すると
どうなる?
感染した歯髄をそのままにしておくと、やがて抜歯に至ります。また、歯茎が腫れたり、細菌がリンパ腺を通して全身に回って思わぬ病気を引き起こしたりする恐れがあります。
歯がズキズキしたり食べ物を噛むと痛みを感じたりする場合は、なるべく早めに歯科医師に相談しましょう。
根管治療によって、大切な歯を抜かずに残せる可能性があります
自分の歯をなんとか抜かずに残したい、と考えている方は多くいらっしゃいます。
歯は1本でも失ってしまうと、口の中のバランスが崩れ、新たな問題を引き起こす原因となることも少なくありません。歯は1本ずつ機能しているのではなく、それぞれに役割を果たしながら、総合的にお口の健康を守っているのです。
歯の状態にもよりますが、虫歯がある程度進行していても根管治療を施すことで「自分の大切な歯を残す」ことが可能なケースがあります。そして将来的なお口全体の健康維持においても良い結果につながる可能性があります。
成増さくら歯科が根管治療で大切にしていること
治療回数を少なく精緻に行う
根管は複雑な形状をしており、非常に細かい部位です。そのため根管治療は時間がかかり、1回10分程度の治療を5回10回と行う歯科医院も少なくありません。
しかし、これは仮の蓋を外し、歯髄を除去し、また仮の蓋を被せる…という工程を何回も繰り返すことになり、それだけ細菌に感染するリスクも大きくなります。患者さまも通院回数が増えて、負担になるだけです。
患者さまの負担を軽減する取り組み
そこで成増さくら歯科では、1回あたりの治療時間を長く(少なくとも30分以上)、治療回数をできるかぎり少なく(可能なら1~2回、最大でも5~6回)することを目指しています。重症化が進んでこれ以上かかりそうな場合は、協力関係にある外部の根管治療の専門医をご紹介します。
成増さくら歯科は「根管治療=時間がかかる」というイメージにとらわれず、患者さまの負担をできるかぎり軽減するよう努めてまいります。
残せる歯髄は極力残す
虫歯の侵食が象牙質まで進んでも、まだ歯髄は無事なケースもあります。こうした場合は感染することを見越して歯髄を除去するのではなく、極力残す方針で治療を行います。
上述のとおり、歯髄は象牙質に栄養を供給する役割を持ち、歯髄の働きによって歯は丈夫かつ健康的に保たれています。患者さまの大切な1歯をなるべく長く保つために、私たち歯科医としてもできる限り残せる歯髄は保存したいと考えます。
神経を守る薬剤・MTAセメントの活用
そこで仕上げの充填に用いるのが、「MTAセメント」です。MTAセメントは歯の成分に近いカルシウムを含んでおり、しっかりと歯に接着します。固まる際にはわずかに膨張し、小さな隙間も埋めることで細菌の侵入を防ぎます。
こうして高い密封性によって歯髄を保護し、感染をシャットアウトするのです。また、殺菌性が高い性質もあるので、治療した根管を清潔に保つ効果を期待できます。ただしMTAセメントは、すべてのケースに使用できるわけではありません。当院ではさまざまな症状に対応できるよう、MTAセメント以外の種類も用意しておりますので、遠慮なくご相談ください。
再感染のリスクを
最小限にする治療環境
根管治療は求められる精度も高く、できる限り細菌感染を防ぐため、無菌の状態で行うことが望ましいと言えます。また、唾液に含まれる細菌や、医療機器・薬剤が根管治療中の歯に影響を及ぼすことも、できるだけ防ぐ必要があります。
ラバーダム防湿による無菌的処置
そこで有効になるのがラバーダムです。あまり聞き慣れない言葉だと思いますが、お口の中にゴムのシートを装着し、治療する歯だけを露出させるもので、ラバーダム防湿と呼ばれます。
海外では根管治療を行う際、一般的にラバーダム防湿が行われますが、日本での普及率はまだ低く、5%程度しかありません。しかし、成増さくら歯科では常に患者さまへ適切な治療を提供することを目標としておりますので、ラバーダム防湿を行ったうえでの根管治療が可能です。
もちろん、ラバーダム防湿を行うかどうかは、患者さまとのしっかりとしたカウンセリングを通して決定しますので、お気軽にご相談ください。
根管治療の
手順・治療の流れ
根管治療は、大きく分けて以下3つの手順で進めます。
治療時の痛みはもちろん、麻酔の痛みにも充分な配慮をして進めてまいります。
歯髄の除去
針のような形をした「ファイル」という機器を使って炎症を起こした歯髄を除去し、根管の中を掃除します。根管は直径1ミリ以下の狭い空間で、患者さまによって形状も異なります。そこで、成増さくら歯科では「ニッケルチタンファイル」を用いています。
ニッケルチタンファイルとは
ニッケルチタンファイル(Ni-Tiファイル)は、従来の一般的なステンレス製のファイルよりも柔軟性があり、狭く複雑な形状の根管でも隅々まで届きます。
ニッケルチタンファイルを用いることで、歯髄を完全に除去できる確率が高まり、治療にかかる時間も短縮できます。
また、ここで注意しなければならないのが、治療中の根管に細菌を含んだ唾液が流れ込んでしまうことです。成増さくら歯科では必要がある場合「ラバーダム」と呼ばれるゴム製のシートで防湿処置(唾液の流入を防ぐ処置)を施し、感染対策を徹底した上で治療を行なっています。
根管の消毒
歯髄を除去して空洞になった根管に細菌が繁殖しないよう消毒液を注入し、仮の蓋を被せます。
根管治療はマイクロレベルの精密な作業が必要です。一度に全ての歯髄を除去できない場合は、STEP①と②の工程を繰り返し、しっかりと根管内を綺麗にしていきます。
根管充填剤の充填
歯髄の除去が終わったら、消毒を行った上で仕上げの充填剤をつめて治療は完了です。ここでわずかでも隙間が生じると、そこに細菌が発生してしまうため、隅々まで着実に充填します。
根管治療後の痛みについて
根管治療は麻酔をしてから行いますので、治療中に痛みを感じることはほとんどありません。ただし、歯の根の中の組織に触れる治療ですので、治療後にはしばらく痛みや違和感がある場合があります。
痛みの度合いや期間については、感染や炎症の進行度合いにもよって個人差はありますが、通常では根管が無菌的になっていれば一週間ほどでおさまることがほとんどです。
根管治療をご検討の患者さまへ
歯髄は歯に栄養を供給する大切な役割を担っています。歯髄を失い、栄養が行き渡らなくなった歯は「死んだ状態」になってしまい、将来割れたり抜けたりするリスクが高くなります。
また、ある論文では神経を取ることで歯の寿命は約半分になるとも言われています。いずれにせよ、できれば歯髄は除去しない方が望ましく、そのためには虫歯を未然に防ぐことが大切です。
虫歯を予防する歯のクリーニングから、虫歯にかかってしまった場合の治療、治療後のメインテナンスまで、成増さくら歯科ではトータルで歯のケアを行なっています。
少しでも痛みを感じたらそのままにせず、遠慮なくご来院ください。もちろん痛みを感じていない段階での早期受診、定期健診が一番ですので、いつでもご相談ください。